第18話: 机の上を見れば力量がわかる——整理整頓は情報処理力
管理職の机の上を観れば力量がわかる。整理整頓は情報処理力の映し鏡
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コーヒーブレイクを始めてから、部下との距離が少し縮まった。15分の雑談がきっかけで、1人の部下が仕事の悩みを話してくれた。業務中には絶対に出てこなかった話だった。場をつくるって、こういうことか。
ところで——自分の机の上がひどいことになっている。
書類が3段に積み重なっている。付箋が7枚貼ってある。どれが最新かわからない。ペンが4本転がっている。先週の会議資料がまだ出しっぱなしだ。
忙しいからだ。片付ける暇がない。そう思っていた。
水曜日、先輩がうちのフロアに来た。こっちの席に寄って、机を見て、何も言わずに去ろうとした。
「先輩、何ですかその顔」
「いや……。お前の机を見て、師匠を思い出した」
「師匠の机も汚かったんですか?」
「逆だよ。師匠の机はいつもきれいだった。で、師匠が言ってたんだ。管理職の机の上を観れば力量が観えてしまうって」
机の上は頭の中
「力量って……。机がきれいなだけで仕事ができるってことですか?」
「そういう話じゃない。師匠が言ってたのは、机の上は頭の中の映し鏡だってことだ。机の上が散らかってる管理職は、頭の中も散らかってる。情報の優先順位がつけられてない。何が終わっていて何が残ってるかを把握できてない」
「……」
「逆に、机がきれいな管理職は、今やるべきことと、あとでやることと、もう終わったことが整理できてる。だから机の上に余計なものがないんだ」
「先輩の机ってどうなんですか?」
「……まあ、俺もきれいなほうじゃないけどな。でも師匠に言われてから、帰る前に必ず机を片付けるようにはしてる。翌朝、きれいな机で1日を始めると、頭もすっきりするんだよ。これは本当だ」
情報処理力の話
「でも先輩、管理職って書類が多いじゃないですか。部下の報告書、会議の資料、上からの通達……。物理的に散らかりますよ」
「そこだよ。師匠は整理整頓は情報処理力だって言ってた。書類が多いのは当たり前だ。問題はそれをどう処理してるかだ」
先輩が自販機のコーヒーを開けながら続けた。
「師匠のやり方は単純だった。書類は手に取ったらその場で判断しろ。自分がやるか、部下に振るか、捨てるか。3つのうちどれかに振り分ける。机の上に置いてあとで考えるってのが一番ダメだって」
「あとで考える……。それ、自分ずっとやってます」
「だろ。あとで考えるってのは、今判断できないってことだ。判断を先延ばしにすると、机の上に書類が溜まる。溜まると何が大事かわからなくなる。わからなくなると仕事が遅くなる。全部つながってるんだよ」
「タイムマネジメントの話と同じですね……」
「そう。一番最初にお前が相談してきたとき、優先順位の話をしただろ。机の上の状態は、お前が優先順位をつけられてるかどうかの結果なんだ」
部下は見ている
「先輩、でもこれって自分の問題ですよね。机が散らかってても、仕事さえちゃんとやってれば——」
「お前、前に管理職は観られているって話したの覚えてるか? 部下はお前の全部を見てるんだよ。机も見てる」
「机も……」
「管理職の机が散らかってたら、部下はどう思う? この人、忙しそうだな。相談しにくいなって思うんだ。それだけじゃない。この人に仕事を任せて大丈夫かなって不安になる。書類の山が積まれてる上司に報告書を出して、ちゃんと読んでもらえると思うか?」
「……思わないですね」
「師匠は机の上は部下への無言のメッセージだって言ってた。きれいな机は俺はお前の報告をちゃんと処理してるってメッセージ。散らかった机は俺はいっぱいいっぱいだってメッセージ。どっちの上司に相談したい?」
「……きれいなほうです」
「だろ。笑顔が場の空気をつくるように、机の上も場の空気をつくってるんだよ」
その日の帰り、30分だけ残って机を片付けた。
書類を全部出して、3つに分けた。自分がやるもの。部下に振るもの。もう終わったもの。終わったものはファイルに入れるか捨てた。付箋を整理して、残ったのは2枚だけだった。
翌朝、きれいな机で座った。何もない机が、少し怖かった。でも頭がすっきりしていた。何から始めればいいかが、すぐにわかった。
昼前、部下が報告書を持ってきた。机に置いて「お忙しいところすみません」と言った。
「いや、全然。すぐ見るよ」
部下が少し驚いた顔をした。そうだ。今までは書類の山の上に置かれて、いつ読んでもらえるかわからなかったはずだ。
机の上は、部下へのメッセージ。