Yyatmita

第16話: 的確な指示を出す——5W1Hで届ける

指示は5W1Hで出す。自分の頭の中にあることは、言わなきゃ存在しないのと同じ

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情報伝達を意識し始めてから、朝会の使い方が変わった。メールで送った内容を口頭でも補足する。個別に声をかける。「伝わったか確認する」を癖にした。部下のミスが目に見えて減った。

ところが、別の問題が出てきた。

「すみません、これってどこまでやればいいんですか……?」

部下に仕事を頼んだら、翌日そう聞き返された。資料を作ってほしいと言ったはずだった。でも部下は、どの範囲の資料を、いつまでに、どの程度の粒度で作ればいいのかがわからなかったらしい。

——言ったつもりだった。でも言っていなかった。

昼休み、先輩と会社の近くのコンビニで弁当を買って、外のベンチに座った。

「先輩、指示の出し方が下手みたいで……」

「前に情報伝達の話をしたとき、聞き手の粗相は言い手の粗相って言っただろ。指示も同じだよ。部下が迷ったのは、お前の指示が足りなかったんだ」


指示は5W1Hで出せ

「師匠はさ、指示は5W1Hで出せって言ってた。シンプルだけど、これができてない管理職が多いって」

「5W1H……。Why, What, Who, When, Where, How ですよね」

「そうだ。お前、部下に何て言った?」

「えっと……『来週の会議用の資料、作っといて』くらいだったと思います」

「それ、5W1Hのうちいくつ入ってる?」

指を折って数えた。When——来週。What——資料。……それだけだった。

「2つだな。誰向けの資料か、なぜ必要か、どの範囲か、どの程度の完成度か——全部抜けてる。お前の頭の中には全部あるんだよ。でも口に出したのは2つだけだ」

「……」

「師匠は自分の頭の中にあることは、言わなきゃ存在しないのと同じだって言ってた。お前がわかってることと、部下がわかってることは違う。そのギャップを埋めるのが5W1Hだ」


伝わらないなら、もう一回

「でも先輩、毎回5W1H全部言ってたら、説明が長くなりませんか? いちいちそこまで言わなきゃいけないのかなって……」

「慣れた部下なら省略できるところもある。でもそれは相手を見て判断する話だ。初めての仕事なら全部言え。何度もやってる仕事なら省略してもいい。師匠は相手の経験値に合わせろって言ってた」

先輩がコンビニコーヒーをすすった。

「あとな、師匠がもう一つ言ってたことがある。1回目で意味が伝わらなかったら、2回目を出せって。指示を出したあとに部下が迷ってたら、それは指示が足りなかったってことだ。怒るんじゃなくて、言い方を変えてもう一回出し直せ

「言い方を変える……」

「同じ言葉を繰り返しても伝わらないんだよ。伝わらなかったのは、その言い方が相手に合ってなかったからだ。角度を変えろ。例えを使え。実物を見せろ。伝え方の引き出しを増やすのが管理職の仕事だ」


指示のあと、復唱させろ

「先輩、指示を出したあとに確認する方法ってありますか? 前回の情報伝達のときに確認が大事だって聞いて、指示でもやりたいんですけど……」

「いい質問だ。師匠のやり方は復唱させるだった」

「復唱……?」

「指示を出したあとに、じゃあ今の内容、自分の言葉で言ってみてって聞くんだ。相手が正しく理解してれば、自分の言葉で言える。ズレてたら、その場で修正できる。指示を出した直後が一番修正コストが低いんだよ」

「その場で確認するんですね……」

「ただし、やり方は気をつけろよ。試されてる感じを出すな。『ちゃんと聞いてたか?』じゃなくて、『俺の説明でわかりにくいところなかった? 念のため確認させて』って言え。悪いのは伝え手のほうだって姿勢を見せるんだ。聞き手の粗相は言い手の粗相だから」

「あ……。前回の話とつながりますね」

「全部つながってるんだよ。情報を伝える、指示を出す、確認する。全部、相手の立場に立てるかどうかだ」


帰り道、考えた。

自分は今まで、頭の中にある情報のうち、どれだけを実際に口に出していただろう。たぶん半分もない。残りの半分は、自分の頭の中にしか存在していなかった。

翌日、部下に仕事を頼むとき、意識して5W1Hを入れた。

「来週火曜の部長への報告会議で使う資料。内容は今月の進捗と来月の見通し。A4で2枚くらい。金曜の午前中までに一回見せてほしい。わからないところがあったらいつでも聞いて」

部下が「わかりました」と言って、すぐ動き出した。迷いのない顔だった。

——指示が的確なら、部下は迷わない。迷わなければ、仕事は速い。