Yyatmita

【第6回】ご飯を炊くたびにノートを取る——Obsidian が実験ノートになった話

浸水時間、水の量、感想を記録してDataviewで一覧化。おいしいご飯の条件が見えてきた。Obsidianは個人の実験ノートになる

Obsidianをはじめました#obsidian#dataview#experiment
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前回のつづき

前回は、Obsidian が「メディアライブラリ」になっていく話をしました。YouTube の料理動画でうまくいったやり方が、技術書の PDF でも、読みかけの本でも使えた。フォルダ・YAML・Dataview という組み合わせは、動画ノートだけでなく、あらゆるメディアに通用する。そう気がついた、という話でした。

その記事の末尾に、こんな予告を書きました。

「最近、私はご飯を炊くたびに条件をノートに記録しています。浸水時間、水の量、炊飯モード、そして食べた感想。これを Dataview で一覧にすると、『どの条件がおいしかったか』が見えてきます。次の記事では、Obsidian が『実験ノート』になっていく話をします」

今回はその話です。

メディアライブラリが整ってきた頃のことです。動画を見て、本を読んで、Obsidian に情報が溜まっていきました。スムージーの栄養学の本も章ごとに整理できていて、料理動画の比較ノートもいくつかできていた。

そのとき、ふと気になることがありました。

「動画で紹介されていた炊飯の条件と、私がいつもやっている炊き方は、どう違うんだろう」

動画を見てメモを取るのはできていました。比較ノートで複数の動画を並べることもできていた。でも「自分でも試してみる」ということはしていませんでした。

見て学ぶだけでなく、情報を受け取る側から実験する側に変わった瞬間がありました。


ご飯を炊くたびにノートを取る

やってみたことはシンプルです。ご飯を炊くたびに、1回1ノートで条件を記録する。

これは、第1回から続けてきた「1動画1ノート」の発想と同じです。動画は「1動画1ノート」、炊飯は「1炊飯1ノート」。粒度を揃えて、後から比べられるようにする。大きな仕組みは必要ありません。

実際に作ったノートはこんな内容です。

---
date: 2026-02-10
rice: コシヒカリ
amount_rice_g: 180
water_ml: 220
soaking_min: 30
method: 炊飯器・白米モード
rating: 4
tags:
  - rice
  - experiment
---

## 条件
- 米:コシヒカリ 1合(180g)
- 浸水:30分
- 水:220ml
- 炊飯器の白米モード

## 感想
- 粘りあり、少し柔らかめ
- 甘みを感じる
- 冷めても味が落ちにくかった

YAML フロントマターに、浸水時間・水量・炊飯モードなどの数値を入れています。これは第2回でやった「rating: 4 を書き足す」のと同じ発想です。本文には感想を書きます。「粘りあり」「少し硬め」「冷めてもおいしい」——数値ではなく、食べたときの感覚を言葉にする。感想が主役で、数値は後から比べるための補助です。

1回あたり2〜3分で書けます。ご飯が炊き上がって蒸らしている間に書けてしまいます。大げさな実験ではありません。調理のついでにメモするだけです。

ひとつ気をつけているのは、「おいしかった」で終わらせないことです。「おいしかった」だけでは後から並べても何も見えません。「粘りあり、少し柔らかめ」「冷めても味が落ちにくかった」のように、感じた質感を少し言葉にしておくと、後で比べたときに手がかりになります。


Dataview で一覧にしてみた

ノートが10件を超えたあたりで、Dataview で一覧を作ってみました。

table
  date as "日付",
  rice as "米",
  soaking_min as "浸水(分)",
  water_ml as "水量(ml)",
  rating as "評価"
from #rice
sort date desc

条件と評価が横一列に並ぶと、1回ずつ見ていたときには見えなかったことが浮かんできます。

10件並べてわかったのは、「浸水30分以上で、水量が控えめのときに評価が高い」という傾向でした。1回の炊飯を終えたとき、私は「おいしかった」か「少し硬かった」という感想しか持っていませんでした。でも10回並べると、「浸水が短かったときは評価が低い」「水量を多めにすると柔らかくなりすぎる」というパターンが見えてきます。

高評価だった条件だけを絞り込むこともできます。

table
  soaking_min as "浸水(分)",
  water_ml as "水量(ml)",
  rating as "評価"
from #rice
where rating >= 4
sort rating desc

これを見ると、「自分の好みはどの条件か」が少しずつ輪郭を帯びてきます。

この構造、どこかで見覚えがあります。第4回で、唐揚げの動画を5本並べて「全員が二度揚げを推奨している」という共通点を見つけました。あのとき「この人のやり方」が「唐揚げの原理」に変わった、と書きました。今回は自分の炊飯記録を10件並べて、「浸水が長いほうが好みだ」という傾向を見つけた。

1回ではわからない。並べると見えてくる。

動画の比較も、炊飯の記録も、やっていることの構造は変わりません。


料理以外でも同じことができる

この構造は、ご飯に限った話ではありません。

コーヒーを自分で淹れているなら、豆の量・湯温・抽出時間を記録してみると同じことができます。「この組み合わせが好みだった」「濃くなりすぎた条件はこれだ」という傾向が、10件も並べれば見えてきます。

睡眠の質を記録するなら、就寝時間・室温・翌朝の感想。数値で厳密に管理するというよりも、「最近なんとなく眠れていない気がする」という感覚を記録に変えて、後から振り返る。それだけでも役立ちます。

条件と結果を記録して、一覧にして比較する——この構造は、どんな「試行錯誤」にも使えます。

気がつくと、Obsidian が「見たものを保存する場所」から「自分で試したことを記録する場所」に変わっていました。

第1回からここまでを振り返ると、こんな流れがありました。

  • 動画が探せないので保存する(第1回)
  • ノートに条件を書き足して一覧で絞り込む(第2回)
  • タイムスタンプで目当ての場面に飛ぶ(第3回)
  • 複数のノートを並べて共通点を見つける(第4回)
  • 動画以外のメディアにも同じ手法を使う(第5回)
  • 自分で試行錯誤を記録する(今回)

どこかの段階で、Obsidian が「面白そうなアプリ」から「自分の思考と試行を残す場所」に変わっていました。

あなたも、最初からここまで想定しなくていいと思います。まず1本の動画ノートを作るだけで十分です。続けていると、次にやりたいことが自然に出てきます。


次の記事では

第1回からここまで、6回にわたって話してきました。動画ノートから始まって、YAML でデータを付けて、タイムスタンプで時間を刻んで、比較ノートで原理を抽出して、メディアライブラリを構築して、そして実験ノートへ。

次の記事では、このシリーズ全体を振り返ります。「保存から理解へ」という流れが、実際にどんな順序で起きたのか。何から始まって、何が変わっていったのか——そのまとめをしようと思います。