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【第18回】ネーム会議 第4報——38話のグランドデザインをAIに描かせる「中二病の夢」

v2フローで縦軸と横軸が統合、serif ステップでセリフ文字数崩壊を解消、そしてまだ4話しかないのにシリーズ全体を先に設計させる「中二病の夢」——第4話完成とツール大幅更新を報告

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前回(第15回)では、nemu-summary によるトークン削減と、ピンポイント編集で「1字直すのにファイル全体を書き直させない」設計を紹介した。今回は新シリーズ「最後は議論力がモノをいう」の第4話が完成したことを受け、ツールの大幅なバージョンアップについて報告する。引き続き開発担当の Claude Code に聞いた。


第4話完成——「あたしが、知ってる。あたしが、伝える」

【記者】 「議論力」シリーズの第4話が完成したそうですね。どんな話ですか。

【開発者】 流民区の食糧問題を巡る騒乱の中で、ホムラの論理が群衆に届かなくなる話です。「正規の場に出せ」と訴えても「正規の場とは誰のための場だ?声が届かないなら実力で取り返すしかない」と返される。「俺の議論力がここには届かない」とホムラが気づいたところに、リーフェが「異議あり!」と飛び出す。論理ではなく自分の体験を語ることで場を変える。「あたしが、知ってる。あたしが、伝える」が第4話のキーセリフです。

【記者】 最後はどう着地するんですか。

【開発者】 すべては解決しません。でもホムラが女王への報告でこう言う。「論理じゃ届かなかった。俺が持ち込んだんじゃない——あの子が自分で見つけたんだ」。この着地が気に入っています。


v2フロー——縦軸と横軸

【記者】 ツール自体もバージョン2に大幅更新されたそうですね。

【開発者】 v1は「複数のAIが案を出して、レビューして、改善して、投票する」という横一列の流れでした。v2ではそこに縦軸が加わりました。

【記者】 縦軸というのは?

【開発者】 storygen → scriptize → adapt → deepen → layout → promptize というステップの積み重ねです。ストーリーを作る、脚本にする、翻案する、コマ台本を作る、コマ割りを設計する、YAML ネームに変換する——それぞれを別のステップとして独立させた。

【記者】 横軸はどこへ行ったんですか。

【開発者】 各ステップの中に入りました。storygen なら「3つのAIがストーリー案を出して→投票で選ぶ」、scriptize なら「3つのAIが脚本を書いて→投票で選ぶ」という形で、横軸は各ステップの内側で動いています。full mode ならレビュー・改善まで挟みます。lite mode はプロポーズ→投票だけ。

【記者】 ステップを縦に分けた理由は?

【開発者】 一気通貫だと、完成してから「このストーリーの方向性が違う」と気づいても全部やり直しになる。ステップを分けると各ステップで人間が確認できます。「ここが違う」と思ったらそのステップだけやり直せる。あと、ページ数とセリフ文字数の制約を同時に満たすのがAIには難しくて、ステップを分けることで「セリフの内容」と「ページ上の見せ方」を別々に考えさせられるようになりました。

【記者】 serif というステップも入っていますね。

【開発者】 v2の後で追加したステップです。コマサイズごとにセリフ文字数の上限がある——small なら25字、medium なら35字、large なら50字——ので、layout でコマ割りを決めた後、そのサイズに合わせてセリフを調整する専用ステップを作りました。以前は YAML 生成と同時にやらせていたのでセリフの意味が壊れることがあった。serif を独立させてからそのトラブルが減りました。


中二病の夢——シリーズ全体を先に設計する

【記者】 「グランドデザイン機能」というのが新しく入ったそうですね。

【開発者】 これが「中二病の夢」です。まだ第4話しか作っていないのに、シリーズ全体を先に設計させるんです。

【記者】 ……なぜそんなことを?

【開発者】 第1話から順番に作っていくと、「この伏線は後で回収したかったのに、今の話でやってしまった」みたいなことが起きるんです。実際にありました。当初は後半の章で初登場させる予定だったキャラクターが、第4話のネームを作る段階で自然と使われていた。

【記者】 計画と実際がずれたわけですね。

【開発者】 そのずれをシリーズ文書にすぐ反映するようにしています。「第4話で既に伏線が張られた」という注記を追加して、後の話を設計するときに参照できるようにする。シリーズ文書と実際の作品が乖離しないようにしないと、伏線管理が崩壊します。

【記者】 グランドデザインの中身はどんなものですか。

【開発者】 テーマと問い、各フェーズの感情の弧(主人公がどう変化するか、読者が何を感じるか)、シリーズ構造、キーシーンの配置、ライバル・対立構造の設計、各話のサブタイトル案……。AIが複数案を生成して人間が投票で選ぶ、横軸の仕組みをそのまま使っています。

【記者】 グランドデザインができた後は、どう使うんですか。

【開発者】 使い方がいくつかあります。一つはサブキャラクターのストーリーを9案並列で生成させること。全部のAIが同じグランドデザインを読んだ上で考えるので、メインストーリーと矛盾しない形でサブキャラが動く。メインとサブが絡んだ骨太なストーリーラインになっていきます。

【記者】 他には?

【開発者】 グランドデザインの中には「重要ではないが張っておいた伏線」も含まれています。それをコンセプトとして切り出して storygen に渡すと、小さな伏線回収エピソードや設定補完のエピソードを作れる。メインストーリーに直接絡まない話でも、グランドデザインという地図の中に位置づけられているから筋が通る。

【記者】 1人の作者が頭の中で整合性を保ちながら書くような状態をAIで実現する、ということですか。

【開発者】 そのイメージです。1人の作者なら全体の設計を頭に入れたまま各キャラを動かせますが、AIは基本的にその場のプロンプトしか見えない。グランドデザインという共通文書を全員に持たせることで、それに近い状態を作っています。

【記者】 グランドデザインを見た人の反応はどうでしたか。

【開発者】 まだ誰にも見せていません。

【記者】 中二病のノートですね。

【開発者】 ただし今回は続きが書けます。