【第7回】Kling にお題だけ渡すと 4 カット、カット割りを渡すと 8 カット全部出た
エチュード No.1「プリン残ってた」を、動画のモデル Kling で 2 通りに作った。お題とキャラクターの参照画像だけを渡し、カット割りを Kling 3.0 に任せた版は、15 秒を 4 カットに割ったが、疲れの段とプリンを見つける絵が抜けた。Claude Code が書いた 8 カットの表を Kling 4.0 に渡した版は、21 秒の 1 本に 8 カットが全部出て、プリンと冷蔵庫も全カットでそろった。代わりに目の色が変わった。fal.ai の従量課金で、$10 のうち $8.96 を使った記録。
← 前の記事: 【第6回】Grok の CLI にお題だけ渡した——カット割りも、そろえ方も、効果音も自分で決めたこの記事の動画と画像は、すべて AI 生成。Kling の動画と静止画は generated by "Kling AI"(fal.ai の API から、動画は Kling 3.0 Pro と 4.0、静止画は Kling o3 を使った)。キャラクターの参照画像は、第5回と同じ Muse の絵。3.0 の版は音なし。4.0 の版の音は Kling が自動で付けたもの。比べるために載せた Gemini 版と Grok 版は、前回までの記事のもの。
第5回では、同じお題を手元の Wan で作り、カット割りから全部こちらが書く Wan を「低級言語」と呼んだ。第6回では、画像と動画の道具を持つエージェントの Grok にお題だけを渡し、8 カット・20 秒を任せた。
今回は Kling を使った。Kling は動画を作るモデルで、Grok のようなエージェントではない。そこで、使い方を 2 通りに分けた。
- お題だけ渡す: カット割りを Kling に任せる。Kling に構成する力があるかを見る
- カット割りを渡す: Claude Code が書いたカットの表を渡す。こちらは Kling の構成の力ではなく、渡した表をどこまでそのとおりに作るかを見る
先に結論を書いておく。どちらも 1 回ずつ作っただけの結果だ。
- お題だけ渡すと、Kling 3.0 は 15 秒を 4 カットに割った。至福の先出し・驚き・噛みしめる・笑顔で止まる、は読める。ただ、最初の「疲れ」の段と、プリンを見つける絵が無かった
- 8 カットの表を渡すと、Kling 4.0 は 21 秒の 1 本に 8 カットを、ほぼ表どおりの切れ目で出した。プリンと冷蔵庫は全カットでそろった
- 4.0 の版は、目の色が参照画像の金から灰緑に変わった。4.0 にはキャラクターの参照画像を渡す引数が無い
- 4.0 は音を自動で付ける(切る引数が無い)。台詞は文字起こしで出てこなかった
- 従量課金(fal.ai)で、$10 のうち $8.96 を使った。お金はほぼ動画の秒数で決まり、4.0 は 1 秒 $0.157。21 秒の 1 本で $3.30
Kling で任せられる範囲
fal.ai の上の Kling は、版によって渡せる物が違う。今回使った 2 つは次のとおり(fal.ai のモデルの説明による)。
| Kling 3.0 Pro | Kling 4.0 | |
|---|---|---|
| カット割りを Kling に任せる | できる(shot_type: intelligent) | 無い |
| カットごとの指示と長さを渡す | できる(multi_prompt) | できる(multi_prompt。1 カット 512 字まで・1 秒単位) |
| キャラクターの参照画像 | できる(elements。正面 1 枚+参照 3 枚まで、指示文で @Element1 と呼ぶ) | 無い |
| 開始画 | 必須(今回使った画像から動画の口。文から動画の口もあるが、参照画像は渡せない) | 必須 |
| 最後のコマ・途中のコマ | 最後のコマ | 最後のコマ・途中のコマ(複数) |
| 長さ | 3〜15 秒 | 3〜30 秒 |
| 音 | 付ける・付けないを選べる | 自動で付く(引数が無い) |
| 1 秒の値段 | 音なしで $0.112(音ありは別料金) | $0.157 |
カット割りを任せられるのは 3.0 だけで、30 秒まで作れてカットごとの指示を受けられるのは 4.0 だ。「任せる版は 3.0、渡す版は 4.0」になったのはこのためで、版の違いも結果に混ざっている。
お題だけ渡した版(Kling 3.0)
渡したのは次の 3 つだけ。
- お題: 第5回・第6回と同じ文(状況・感情の弧・評価基準・形式・キャラクター)を英語にしたもの。頭に「カット・画角・切り方は自分で決めて」とだけ足した
- キャラクターの参照画像: 同じ 1 枚。
@Element1として渡し、服だけ部屋着に替える、とお題のとおりに書いた - 開始画: 参照画像を渡せる「画像から動画」の口は開始画が必須なので、これも Kling の静止画のモデル(o3)に、同じお題と参照画像で「この動画の最初のコマ」を描かせた
Kling o3 は、最初のコマを開いた冷蔵庫の前の笑顔にした。お題の「冒頭に一番強い表情を先に出す」を拾ったように見える。ただ、冷蔵庫の棚は空だった。
長さは 3.0 の上限の 15 秒にした(お題は 15〜25 秒)。音は、お題に「音は編集で合成した効果音だけ」とあるので、Claude Code が切った。作るのに 8 分 20 秒かかった。Kling は 15 秒を 4 カットに割った。
| カット | 秒 | 画角 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 1 | 0〜4.5 | 膝上 | 開いた冷蔵庫の前で笑顔 → 目を閉じた笑み → 落ち着いた顔 |
| 2 | 4.5〜7.3 | 腰上 | 冷蔵庫に手を伸ばし、茶色いカップを持ち上げて驚く |
| 3 | 7.3〜10.5 | 全身の引き | カップを両手で抱え、目を閉じて噛みしめる |
| 4 | 10.5〜15 | 腰上 | カップを胸の前で持ち、笑顔のまま止まる |
画角は膝上 → 腰上 → 全身 → 腰上と変わり、1 枚の絵のまま 15 秒が続くことはなかった。表情の段も、驚き → 噛みしめる → 笑顔で止まる、の順に出ている。抜けたのは、お題の最初の段の「疲れて無表情」と、冷蔵庫の中のプリンを見つける絵だ。棚は最初のコマから最後まで空のままで、カップは手に取った瞬間に画面に現れる。
カット割りを渡した版(Kling 4.0)
こちらは、Claude Code が書いた 8 カットの表を渡した。表は、第5回で集めたカット割りの原則(引き → 中 → 寄り、見る顔 → 見た物 → 反応の顔、寄りは感情の山だけ、など)に沿って書いたものだ。
| カット | 長さ | 画角 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1 秒 | 正面・胸から上 | 至福の先出し(カップを顎の下に、目を閉じる) |
| 2 | 3 秒 | 引き・少し見下ろす | 疲れて冷蔵庫の前に来て、右手を取っ手に |
| 3 | 2 秒 | 冷蔵庫の中から・正面・胸から上 | 扉が開き、冷たい光が疲れた顔に。目が棚へ落ちる |
| 4 | 2 秒 | 彼女の目の高さから棚を見下ろす | 扉の内側の棚にプリンが 1 個 |
| 5 | 3 秒 | 冷蔵庫の中から・正面・顔の寄り | 柔らかい驚き(目と唇が少し開く) |
| 6 | 3 秒 | 中サイズ・腰から上 | 両手でカップを取り、胸の前へ |
| 7 | 3 秒 | 正面・顔の寄り | カップを顎の下に、目を閉じて噛みしめる |
| 8 | 4 秒 | 正面・腰から上 | 抱えて笑顔のまま止まる(扉は閉まっている) |
4.0 にはキャラクターの参照画像を渡す引数が無い。そこで、先に Kling o3 でキャラクター(部屋着)・台所・プリンの基準画を作り、そこから 1 カット目の開始画を作った。4.0 が受け取ったのは、この開始画 1 枚と、カットごとの指示文と長さだけだ。
作るのに 8 分 45 秒かかった。出てきた 21 秒の切れ目は 1・4・6・8・10・13.8・17 秒で、表の 1・4・6・8・11・14・17 秒とほぼ同じだった。驚きの寄り(5)が 1 秒縮み、取り出す所(6)がその分延びている。
完成品
上の段は「1 回の生成に文で頼んだ」同士で、3.0 の版と第5回の Gemini 版。下の段は「約 20 秒・8 カット」同士で、4.0 の版と第6回の Grok 版。
Kling 3.0 版(お題だけ・15 秒・音なし)
Gemini 版(第5回・10 秒)
Kling 4.0 版(カット割りを渡した・21 秒)
Grok 版(第6回・お題だけ・20.25 秒)
3.0 の版の元の大きさは 1080x1916、4.0 の版は 724x1284。載せたのはどちらも 720x1280 に縮めたものだ。
お題の評価基準に沿って、各カットの頭と尻と真ん中のコマ、顔と手の拡大で確かめた。全コマを見たわけではない。
| 評価基準 | 3.0 版(お題だけ) | 4.0 版(カット割りを渡した) |
|---|---|---|
| 1. 音なしで感情の変化が段階的に読めるか | 驚き → 噛みしめる → 笑顔で止まる、は読める。疲れの段が無い。先出しの笑顔が 4.5 秒続き、最後は落ち着いた顔に戻る | 読める。至福の先出し(1 秒)→ 疲れ(2・3)→ 驚き(5)→ 噛みしめる(7)→ 抱えて笑顔(8) |
| 2. 視線・手の到達点・対象物の位置と同一性 | 冷蔵庫は 1・2・4 で左に白く開いているが、3 の引きでは灰色の閉じた箱に見える。棚はずっと空で、カップは手に取った瞬間に現れる。カップは茶色で、コーヒーにも見える | プリン(透明なカップ・カラメル)と冷蔵庫(左・3 ドア)は全カットでそろった。取っ手にかけたのは右手。4 の棚のプリンを、6 で両手で取る |
| 3. 大げさすぎず真剣すぎず、別人にならないか | 大げさではない。目の色(金)・髪・シュシュは参照画像のまま | 大げさではない。ただ目の色が金から灰緑に変わった。冒頭は片目をつぶったウインクに見える |
| 4. 手・髪型・衣装・背景が崩れないか | 見た範囲では崩れは無かった | 見た範囲では崩れは無かった。8 は「扉は閉まっている」と書いたのに、開いた所から閉まる |
目の色が変わったのは、4.0 の開始画が目を閉じた顔で、目の色の手がかりが渡っていなかったからだと考えている。参照画像を渡せた 3.0 の版は金のままだった。ただ、どちらも 1 回ずつなので、確かめたわけではない。
4.0 が付けた音は、文字起こしでは台詞が出てこなかった。音の大きさの山は、歩いてくる所・扉が開く切れ目・カップを取る所・目を閉じる所・最後のカットの頭にあり、最後の 3 秒は無音だった。
1 本の mp4 で返ってくる
multi_prompt で 8 カットを 1 回に頼むと、Kling は 1 本の mp4 で返してくる。カットごとの素材は手元に残らない。気になるカットが 1 つあっても、そこだけを差し替える手が無く、直すなら 21 秒を作り直すことになる($3.30)。作り直して同じカットが出るかは試していない。カットごとに 1 本ずつ頼めば素材は残るが、そのときは Kling ではなく、こちらがつなぐことになる。
第6回の Grok は、基準画・静止画・各カットの動画が手元に残り、直しを頼むと 1 カットの使う区間を切り直して直した(第6回の追記)。違いは、1 回にまとめて頼んだか、カットごとに作ってつないだかの、使い方の違いでもある。
つまずいたところ
最初は Claude Code のエージェントに任せかけた
Grok と同じ「お題だけ」の条件にしようとして、最初は Claude Code の新しいエージェントに、お題と参照画像と Kling の呼び方を渡して任せた。ただ、それだと試しているのは Claude Code のカット割りで、Kling の構成の力ではない。途中で止めた。止めるまでに、動画 5 本で $3.45、静止画 14 枚と合わせて約 $3.85 を使っている。この記事の結果には入れていない。
音を切ったのはこちらの判断
3.0 の版で音を切ったのは、お題の「音は編集で合成した効果音だけ」に合わせた Claude Code の判断だ。第6回の Grok は効果音まで自分で作った。Grok と同じ条件にするなら、音も Kling に任せたほうがよかった。
訳し方が効いたかもしれない
3.0 の版では、お題を英語にするとき、プリンを「pudding」とだけ書いた。出てきたのは茶色いカップで、コーヒーにも見える。4.0 の版のカットの表では「custard pudding with a caramel top」と書き、透明なカップのカラメルのプリンが出た。訳し方が効いた可能性があるが、1 回ずつなので分からない。
静止画の右下の印
Kling o3 の静止画のうち、右下の隅に、小さな丸い印(文字は読めない)が入ったものがあった。見た 5 枚のうち 2 枚で、3.0 の版の開始画もその 1 枚だった。印は 3.0 の版のカット 1 の間、右下に残っている。4.0 の版の開始画には入っておらず、動画にも出ていない。
時間とコスト
fal.ai に $10 を前払いし、自動チャージは切って使った。残高は $1.04 になった。
| 実行 | 中身 | かかった時間 | 使った額 |
|---|---|---|---|
| 3.0 版 | 開始画 1 枚・動画 15 秒 | 約 1 分+8 分 20 秒 | 約 $1.71 |
| 4.0 版 | 基準画 3 枚・開始画 1 枚・動画 21 秒 | 約 3.5 分+8 分 45 秒 | 約 $3.41 |
| 途中で止めた分 | 静止画 14 枚・動画 5 本(計 22 秒) | 約 25 分 | 約 $3.85 |
| 合計 | 静止画 19 枚・動画 58 秒 | $8.96 |
- 動画の値段は fal.ai のモデルの説明の値(4.0 は 1 秒 $0.157、3.0 は 1 秒 $0.112)で、残高の減り方と合った。静止画は、残高の減り方から 1 枚約 $0.028 になる
- 静止画は 1 枚 24 秒〜2 分、動画は 15〜21 秒の 1 本で 8〜9 分かかった。4〜5 秒の動画 1 本でも約 4 分かかった(途中で止めた分)
まだ分かっていないこと
- 毎回こうなるか(どちらも 1 回だけ)。3.0 に任せたとき、割り方は毎回変わるか
- 3.0 で、キャラクターの参照画像と、こちらのカットの表を一緒に渡したらどうなるか(今回は版の違いも混ざっている)
- 4.0 の開始画を目を開けた顔にすれば、目の色は保てるか
- 4.0 が付けた音の中身(音の大きさと文字起こししか見ていない)
- 静止画の右下の印が何か