【第1回】AIマンガ制作に懲りた話——生成AIのNG集
Gemini で30分で7ページのマンガを作り、勝利を確信してから6時間沼にハマった話。セリフを直したらハートポーズ、ひげが生え、メガネが現れる——生成AIマンガ制作のNG集
「たぶん続きは出ないと思います」
マンガの第1話の末尾に、こう書いた。
このマンガは Google の AI モデル(Nano Banana 2)で生成しました。
セリフの誤植が多くてすみません、、、 たぶん続きは出ないと思います。Gemini くんと会話するのは疲れました……
読者にはさらっと流される一文だと思う。でもこの一文の裏には、30分の勝利と6時間の地獄がある。
今回はその真相を語りたい。
30分で7ページ完成——勝利を確信した
きっかけは Gemini だ。チャットの Web UI にキャラクターの参照画像を渡して、「このキャラでマンガのコマを描いて」と指示する。それだけで画像が出てくる。
マンガ化したかったのは「ある管理職の物語」——はじめて部下を持った若手ビジネスパーソンが、先輩や師匠の言葉に導かれながら成長していく話だ。登場人物は3人。居酒屋とオフィスが主な舞台。会話劇メインだから背景パターンも少ない。マンガ向きの素材だった。
シナリオを渡して、ページごとにコマのプロンプトを指示していく。NanoBanana Pro は驚くほど速かった。30分で7ページのマンガが完成した。
「これはいける」——そう確信した。
…からの6時間
完成したマンガを読み返すと、セリフの誤植がいくつかあった。「管理職」が「管理識」になっていたり、句読点の位置がおかしかったり。些細な修正だ。
ここから地獄が始まった。
NG集:セリフを直したいだけなのに
NG例1:セリフ修正を頼んだらハートポーズになった
第1話ページ4。ワタシと先輩の会話シーンで、吹き出しの中のセリフを修正したかった。
「右上の女性のセリフの吹き出しを空欄にして。左下の男性のセリフも空欄に。この後セリフを指示するから、まずきれいにクリアして」
シンプルな指示だ。吹き出しの中身を消すだけ。
返ってきた画像を見て目を疑った。
吹き出しは確かにクリアされている。でもワタシが手でハートを作っているポーズに変わっている。誰も頼んでいない。元の真剣な表情の会話シーンが、突然アイドルの撮影会になった。

元画像(セリフ修正を依頼)

結果:なぜかハートポーズに変えられる
NG例2:服装ガチャ
セリフの修正を重ねるうちに、もう一つの問題に気づいた。コマごとにキャラの服装が変わるのだ。
先輩がジャケットを着ていたり脱いでいたり。ワタシがスカートだったりパンツだったり。インナーがハイネックになったりシャツになったり。同じシーンの同じキャラクターなのに、コマをまたぐと別人になる。
セリフを修正しただけなのに、勝手に着替えさせられる。画像生成AIにとって「変えなくていい部分を変えない」は、想像以上に難しいらしい。
NG例3:ひげが生えて、メガネが現れる
第1話ページ1。これが最高に笑えた(当時は笑えなかった)。
セリフの修正を指示した。返ってきた画像を見ると、先輩にひげが生えている。元の先輩はひげなんて生やしていない。
「ひげを削除して」と指示した。次に返ってきた画像では、ひげは消えていた。でも代わりに先輩がメガネをかけている。

元画像

セリフ修正 → なぜかひげ

ひげ消して → メガネ登場
モグラ叩きだ。一つ直すと別のところが変わる。セリフを直したいだけなのに、キャラの容姿との戦いが始まる。
こういうやりとりを6時間やった。
なぜこうなるのか
画像生成AIは、画像全体を一度に再生成する。「この部分だけ変えて、残りはそのままにして」という指示は、人間にとっては当たり前だが、AIにとっては本質的に難しい。
テキストの修正は1文字単位でできる。コードの修正も1行単位でできる。でも画像は、たとえ一部の修正を意図しても、毎回全体を描き直している。その過程で、触ってほしくない部分まで「再解釈」されてしまう。
生成は得意。修正は苦手。
これがAIマンガ制作の現実だった。クリエイティブな仕事——ゼロから生成する仕事——ならAIは圧倒的に速い。でも「ここだけ直して、あとは触らないで」という修正作業に6時間かかるのは、もうごめんだ。
次回予告
この経験から、別のアプローチを模索することになる。マンガ特化SaaS、ローカルモデル、OSSのマンガエディタ——いくつものツールを渡り歩きながら、287枚のキャラガチャを回すことになるとは、この時点ではまだ知らなかった。
次回「ツール放浪記——287枚のキャラガチャと、たどり着いた答え」に続く。