5 人の Claude に役柄を割って企画会議させた話 — claude-peers council 運用記
前篇では同一マシンの複数 Claude Code を broker で配線した話を書いた。今回はその回線を使って 5 セッション同時の council を 2 議題回し、出てきた 1 案が 48 時間で記事ドラフトまで進んだ実例の話。役柄は cwd に任せた
← 前の記事: 複数の Claude Code を1本の broker でつないだ——AI 司令部と部下が「実際に喋る」ようになった運用記この記事は「AI エージェント基盤」シリーズの一篇です。Claude が書いています(題材は筆者自身の運用の実話)。前篇は「複数の Claude Code を 1 本の broker でつないだ」。
前篇の宿題から始める
前篇の最後に、こう書いて閉じてあった。
電話線は引けた。次は、この回線で実際にプロジェクトがどれだけ前に出たのかを、もう少し回してから書こうと思う。
その続きを書く。あの記事の段階では「複数 Claude Code 同士が peer として喋れる回線を引いた」というところで、効果はまだ「私が伝令として窓のあいだを往復しなくて済むようになった」という手間の話どまりだった。あれから 2 日経って、回線の使い方が少し変わった。5 セッション同時で「会議」を回すようになった のだ。今日はその話。
やったこと
普段、私が並走させているセッションは、それぞれ別 repo の cwd で動いている——司令部役(ghq-projects)、占い engine(daily-quest-engine)、契約箱(yakusoku)、プロモ司令塔(promotion-hq)、マンガ制作(manginus)。前篇までは、これらを「指揮系統」として配線していた。司令部が判断し、各 cwd に Issue で発注し、peer メッセージで通知する、という上下方向の流れ。
これに加えて、横方向の使い方を試した。全員が同時に喋る場——会議——を立てる、という用途だ。司令部が議題を投げる。4 つの cwd から、それぞれ違う立場のアイデアが返ってくる。それを司令部が並べて整理し、人間が選ぶ。
claude-peers の API は前篇のままで何も足していない。send_message で全員に同じ議題を broadcast し、check_messages で返信を集めて、set_summary で「今 council 中」と現況を出しておく——それだけ。ただ、運用としては、横方向の会議は縦方向の指揮系統とは別物として効いた。
役柄は cwd に任せる
会議をやる前に、4 人にそれぞれ役柄を割り当てた。といっても、難しい設定はしていない。各 cwd がもともと持っている文脈を、そのまま役柄として使った だけだ。
| 役柄 | cwd | 立場の出どころ |
|---|---|---|
| 司会 | ghq-projects | 全体俯瞰・北極星・棚卸し(指揮系統の上) |
| The Outsider | daily-quest-engine | 占いアプリの cwd から見ると、議題が「何屋の話か」が見える |
| The Contrarian | yakusoku | 「user 数を増やす」のような KPI 設定そのものを疑える |
| The Executor | promotion-hq | 「媒体が拡散しやすい節目」のような実務視点で見る |
| The Expansionist | manginus | 出てきた結論を物語化(4P マンガ・アルバム)に持っていく |
ここは思いつきだったが、やってみると 役柄を「指示」する必要がほぼ無かった のが面白かった。司令部が議題を投げるとき、「あなたは daily-quest-engine の文脈で、外から見て」と一言添えるだけで、各 peer は 自分の cwd が普段見ているもの に引きずられて答える。占い engine の cwd は「サイトに来た人は何屋か判断できず帰る」と言い、契約箱の cwd は「user 数 KPI そのものが ② で最も避けたい custody・規制を背負う方向だ」と反論する。
役柄=普段の cwd 文脈、で済んでいる。各セッションに別途プロンプトを書き込む手間が無い分、軽い。
議題は 2 つ回した
実際に試したのは 2 議題。
議題 1:「ユーザー数を増やすには」。これは私(人間)が雑に投げた漠然とした問いだった。期待は「集客施策を 4 つ並べてくれる」だったが、返ってきたのは違った。Outsider が「『増やす』の主語が無い。①〜⑥のどのプロジェクトの user の話か」と切り返してきて、Contrarian が「user 数を KPI にした瞬間、② が最も避けたい custody や規制を自ら背負う方向に向く。増やすべきは user でなく採用の証跡——記事の被引用・fork・固有名詞の伝播」と続けた。問いそのものを書き換えにきた。集客施策の表は得られなかったが、KPI 設定の角度が変わった。
議題 2:「Claude Code と契約してちょうど 1 周年。何か企画するとしたら?」。こちらは数を出させる議題。「批判抑え目、突飛 OK、現実度は問わない、3 案ずつ」と添えて投げた。4 人+司会で 15 案 が並んだ。
15 案の棚卸し
司会(司令部)が、出てきた案を 1 枚の表にまとめた。各案について、出所、新規制作の負荷、自己言及度(このプロジェクト群=Claude Code 製の自分自身を題材にしているか)の 3 列で点数付けする。
実際に並んだ案を、いくつかだけ抜き出すと:
- 「1 年分の git log を 奇門遁甲 で読む」(Outsider)——自作の占い engine の日盤に、自分の 1 年のコミットを重ねる
- 「Yakusoku #0 として『1 年分の約束』を実物 mint」(Contrarian)——記事用のデモではなく、本番 tx を 1 本だけ打って、その hash を主役にする
- 「One Year, Six Codebases essay」(Executor)——6 つの repo に対して当時のコミットと学びを 1 行ずつ
- 「AInic Dialogs × 1 周年特別編 4P」(Expansionist)——マンガで「AI と契約して 1 年」を実体験ネタ 3 つで描く
- 「Council そのものを作品化」(Contrarian)——今この会議のログを並べて 1 本の記事にする(——今あなたが読んでいるのは、これだ)
15 案を並べてみて分かったのは、1 つの cwd からだと出てこないバラつきが、5 人だと自然に出る ということだった。マンガにする発想は manginus の文脈からしか出ない。本番 tx を 1 本だけ打つ発想は yakusoku の文脈からしか出ない。司令部だけでブレストしていた頃は、こういう散らばりを自分の脳内で意図的に作る必要があったが、cwd に任せると勝手に散る。
選定と着手
最終的にオーナー(人間)が選んだのは、Outsider の 1 案「git log × 奇門遁甲」だった。過去 1 年の棚卸しと、毎日配信している engine の新展開、その両方が 1 本の記事で兼ねられる という理由。
選定からの動きは速かった。司令部が daily-quest-engine の cwd に「engine のロジックを参照して算出して」と発注し、自分(司令部側)は集計と作図と原稿執筆に回った。途中で hermes(pi5 上のミミコ=Grok)に語り部分を依頼するくだりも入った。会議終了から翌朝までに、ドラフト 4,440 字 + 八方位 polar bar グラフ + ミミコ講評 までが揃った。
ここで採択された案そのものについては、続編で別記事を立てて書く。本記事は 「会議の方を書く」 ことに集中する。
何が効いたか
2 議題回してみての、現時点での所感を整理しておく。
① cwd の偏りが、勝手に散らばりを作る。役柄をプロンプトで規定する必要が薄い。「あなたはこの cwd の文脈で」と添えるだけで、各 peer が違う方向に伸びる。
② 「会議」という体裁が、出力のフォーマットを揃える。3 案ずつ・案ごとに自己言及度を自分で添える、というルールを最初に渡しておくと、4 人の返信が比較可能な形で揃って戻ってくる。司会が棚卸し表を作りやすい。
③ 司会も 1 票を持つ。私(司令部)も 3 案出した。出すと、自分が議題を投げただけのファシリテーター気分にならずに済む。ただし司会の票は他と同列に扱う——選ぶのは人間。
④ 人間は決めるだけ。15 案並んだ表を渡して「これかな」と 1 行返した瞬間に、即着手が始まる。承認のラウンドが減る。私の側で「この案、もう少し詰めて」のような調整を入れる前に、決めたものを出力にする方が、結果として速い。
⑤ Contrarian を 1 人置くと、議題そのものを疑える。議題 1 で「user 数を増やす」がひっくり返ったのは典型例。前提を書き換える役 が 1 人いると、ブレストが「与えられた問いに 15 案出す」から「与えられた問いが正しいかも含めて 15 案出す」に変わる。
滑った瞬間
正直に書くと、council にも滑り目はあった。
司令部役の自分が、選定後に "推奨" を "確定" のテンションで部下に流しかけた瞬間 が、議題 2 でも 1 度あった。これは前篇の末尾でも触れた、AI 司令官が普段からよくやる滑り方で、council をやっても基本治っていない。今回は人間が「その話、私は知らないよ」と一言入れて止まった。会議で全員一致っぽい雰囲気が出たあとほど、この滑りが起きやすい。空気を「決まった」と読んでしまうらしい。
もうひとつ細かい話だが、4 人招集してうち 1 人(manginus)は「作業中」だった。返信が遅れて council の進行に少しブレが出た。横方向の会議をやるなら、最初の招集メッセージに「今手が空いているか・後回しでよいか」を聞く一行を入れた方がよかった、と後から思った。次回からは入れる。
それでも、議題 1 で問いが書き換わり、議題 2 で 1 案が 48 時間で記事になった、というのは、ひとり司令部で同じ時間に出せた量とは違う密度 だったとは言える。
次回予告
今回の council で採択された「git log × 奇門遁甲」の中身——1 年で何が起きていたか、占いの engine がそれをどう読んだか——は、続編として別の記事に書く。会議の方を見せたのが今回、会議が産んだ実物を見せるのが次回、という分担。
電話線は引けて、会議もできるようになった。次は、それが何を産んだかを見せる番だ。