Yyatmita

片付けが続かないので、AIに相談してアプリを作った話

KonMari、断捨離、そして「相談しながら、自分だけのメソッドを見つける」という発想

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年末の大掃除。今年こそはと意気込んで、朝から片付けを始めました。

3時間後、部屋はむしろ散らかっていました。押入れから出した箱の中身が床に広がり、「捨てるか残すか」を悩んでいるうちに疲れて、気づいたら夕方。翌朝、昨日より悪化した部屋を見て、思わずため息が出ました。

「また同じことを繰り返している」

片付けが苦手な人って、実は「やる気がない」わけじゃないんです。やる気は十分ある。むしろやる気を出して失敗する。これが一番つらいところです。


片付けには「理論」がある

行き詰まると、私はAIに相談する癖があります。ChatGPTにこう聞きました。

片付けが苦手です。毎年大掃除で失敗します。何がいけないんでしょうか?

返ってきた答えが、意外なほど構造的でした。

多くの人が「とりあえず全部出す」「とりあえず捨てる」から始めますが、判断基準がないまま行動するので疲弊してしまいます。世界中で注目されている2つのアプローチを知っておくと、なぜ失敗するかが見えてきます。

その2つが KonMari(こんまりメソッド)断捨離です。

KonMari は近藤麻理恵さんが提唱したメソッド。判断基準はたった一つ、「ときめくかどうか」。手に取ってときめかなければ手放す。シンプルで、世界中に広まりました。

断捨離はやましたひでこさんが提唱。「断つ・捨てる・離れる」、物への執着を手放すという考え方です。この思想の背景にはヨーガの教えがあり、さらにたどると仏教の「執着(ウパーダーナ)を手放す」という概念に行き着きます。このサイトの別のドメイン「ブッダイズム。」で扱っているテーマと、2500年越しで繋がっているんです。

2つのアプローチは言葉は違うけど、構造は同じでした。

  1. 判断 — 残すか手放すかを決める(KonMari: ときめき / 断捨離: 執着の有無)
  2. 行動 — 実際に片付ける(分ける・捨てる・収納する)
  3. 維持 — 片付いた状態を保つ(習慣化)

AIに言われたとき、「あ、そうか」と腑に落ちました。多くの人は判断と行動で力尽き、維持で失敗する。リバウンドの本当の原因はそこにある、と。


でも、みんなうまくいかない

理論はわかった。でも実践が難しい。KonMari には2つの壁がありました。

まず「全出し」。カテゴリごとに全部一箇所に集めることが前提ですが、一人暮らしの狭い部屋で服を全部出したら生活空間がなくなります。次に「ときめき」。工具や確定申告の書類に「ときめくかどうか」で判断しろと言われても、正直ピンとこない。

断捨離の思想は深い。でも「この箱どうしよう?」という具体的な問いには、少し抽象的すぎる気もしました。

もっと根本的な問題もあります。理論は「平均的な状況」を想定して書かれています。でも実際には、家族構成、部屋の広さ、確保できる時間、性格、物への執着の強さ……みんな違う。片付けが苦手な理由も「決断が遅い」「途中で疲れる」「捨てた後に後悔する」「そもそも何から始めればいいかわからない」と、人によってバラバラです。

本に書いてあるやり方がそのまま自分に当てはまらないのは、あなたのせいじゃない。

必要なのは「自分に合った、ちょうどいいメソッド」。でもそれは本には書いていない。自分で見つけるしかない。


一人で考えると疲れる。相談しながらだと楽

「自分に合ったやり方を見つける」と言うのは簡単ですが、一人で考えると判断疲れします。

誰かに相談しながら考えると、全然違う。「私、こういう状況なんですが、どうすればいいですか?」と話すだけで、考えが整理される。カウンセリングや認知行動療法で使われる手法に近い感覚です。対話によって思考が言語化され、具体的な行動が見えてくる。

「やる気が出たから片付ける」じゃなくて、「相談しながら決めるから、動ける」。

yatmita の理念は「理論を学んで、AIと一緒に実践する」です。KonMari と断捨離を知った上で、自分の状況をAIに話しながら「じゃあ私はどうすればいいか」を一緒に考える。そのための相談相手として、ChatGPT の GPTs(カスタムAIアシスタント)で片付けアシスタントを作りました。

たとえばこんな会話ができます。

私: 今日30分あります。何から始めればいいですか?

アシスタント: 前回のタスクがありますね。キッチンの引き出しが途中でした。30分あれば、調味料の期限チェックと整理が終わりそうです。続きをやりますか?

漠然とした「片付けたい」が、「次の30分でやること」に変わる。これが相談の力です。


相談だけじゃ足りない理由

でも、会話で終わってしまうと困ることがあります。

提案してもらったことを別のメモアプリに書いて、それを見ながらやる。次にGPTsを開いたとき、また最初から状況を説明する。この手間が積み重なると、だんだん使わなくなる。

ChatGPT には Actions という機能があります。チャットの中から直接、外部のアプリにデータを送れる仕組みです。専門的に言うとAPI連携ですが、使う側から見れば「チャットでGPTsに話したことが、そのままタスクに登録される」ということ。

「キッチンの引き出しを整理する」と相談して、「登録しますか?」「はい」の2ステップでタスクが生まれる。次にアプリを開いたとき、前回の続きがそのまま表示されている。

そのために、タスク管理アプリと連携用のサーバーを自分で作りました。Rust という言語で書いています。「高速・安全なWebサービスが作れる」プログラミング言語で、こういった小さなAPIサーバーとの相性がいい。

ChatGPTで相談 → タスクが自動登録 → スマホで確認して実行。このフローを一気通貫にしたかったんです。


安全に使える仕組み

タスクを登録するということは、データをサーバーに預けるということ。だから安全な仕組みを最初から設計しました。

ログインに Google アカウントを使います。 パスワードは私のサーバーには一切預けません。Google の認証システム(業界標準の OAuth という仕組み)に完全にお任せしています。「Googleでログイン」ボタンを押したら、あとはGoogleのページで本人確認が完了する。パスワードが漏れる心配がない仕組みです。

そしてプライバシーポリシーを5行で書きました。メールアドレスはサーバーに保存しない。Google から受け取った情報以外は取得しない。第三者に渡さない。それだけです。

「安全です」と言うのは簡単です。でも「何を保存しないか」を明確にする方が、ずっと誠実だと思っています。読んでも意味がわからないプライバシーポリシーは信用できない。だから誰でも読めば理解できる言葉で書きました。


思いついた瞬間に記録できること

片付けで一番大事なのは、行動の摩擦をゼロに近づけることだと気づきました。

「あ、あの引き出し整理しなきゃ」と思っても、アプリを探してログインして……とやっているうちに、忘れます。そしてまた「やろうと思っていたのに」のループへ。

だからアプリを PWA(プログレッシブウェブアプリ)にしました。専用アプリのダウンロードは不要で、ブラウザで開いてホーム画面に追加できます。インストールの手間なし、ワンタップで起動。

さらに、スマホの音声入力ボタンを押せば、話すだけでタスクが登録できます。テキスト入力すら不要です。「キッチンの引き出しを整理する」と話せば、そのまま文字に変換されてタスクになる。

思いついた瞬間に記録できる。これが「後でやろう → 忘れた」のループを断ち切ります。


「おうちを決める」

片付けの理論で、意外と見落とされがちなステップがあります。

「残すと決めたものの、定位置を決める」

分けて、捨てて、やれやれと思った後、残ったものをなんとなく棚に戻す。1週間後、また散らかっている。

なぜか。「ここに住んでいる」という場所が決まっていないから。使い終わったとき「どこに戻せばいいか」が明確でないと、人は適当な場所に置いてしまう。これが片付けリバウンドの、もう一つの原因です。

「このものはここに住んでいる」と決めること(片付けの言葉で「おうちを決める」と言います)で、使った後に戻せるようになる。

GPTsのアシスタントは、タスクが完了したとき「残したものの置き場所は決まりましたか?」と一言聞いてくれます。決まっていなければ「おうちを決める」タスクを一緒に考える。片付けの理論を知っているから、AIが適切なタイミングで適切なことを聞けるんです。


これから

実は Google Home 対応を考えていました。「OK Google、洗面台の下を整理するをタスクに追加して」——スマホすら触らず、声だけで完結する世界。

そのために Personal API Key の仕組みを作り、外部サービスからタスクを追加できるエンドポイントも用意しました。技術的には準備万端。あとは IFTTT(サービス同士をつなぐ連携ツール)で Google Assistant と接続するだけ……のはずでした。

ところが、Google が 2022 年に IFTTT との連携を大幅に制限していました。カスタムフレーズに自由なテキストを入れる機能が廃止されていたんです。「○○をタスクに追加して」の「○○」の部分を渡せない。これでは使えません。

Google Home を経由しない代替手段(Home Assistant など)もありますが、自宅サーバーが必要になるなど大掛かりになりすぎます。

結局、一番実用的だったのは PWA の音声入力でした。アプリを開いて、マイクボタンを押して、話す。3ステップで完結する。スマートスピーカーに比べれば1ステップ多いけど、十分に速い。

技術の世界では、こういうことがよくあります。プラットフォームの方針変更で、昨日までできたことが今日できなくなる。でもそのとき「じゃあ別の方法で」と切り替えられるのが、自分でアプリを作っている強みです。API は残してあるので、将来また道が開けたときにすぐ対応できます。

完璧な片付けを一気にやろうとすると、必ず失敗します。私がそうでした。大事なのは小さく始めて、記録して、少しずつ進むこと。

まずはアプリを使ってみてください。ChatGPTで相談してみてもいい。

一人で完璧にやる必要はないんです。少しずつ、自分のペースで。

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