Yyatmita

最終話 本物の材料と、本当っぽさ

うそかもしれない話
が、なんで、こんな
に本当っぽいんだろ
……組んでみれば、
分かるかも
ここまでを、一本の
話にしてみる
『仮に本当だとする
なら』ね
はい。順に並べて
いきましょう
シャムの宮廷で、男
は首を切られて、女
は流された
似た例なら、そろっ
ています
密通への重い罰。
切った首を人に
掛ける罰。筏で流す法
ただ、
ぴったりの一件は、
見つかっていません
舟には、書付。
『100日たったら、
助けてもよい』
書付と100日は、
1699年の噂だけです
ポルトガル語なら、
長崎に読める人
はいました
女は、窓のついた
小さな船で流された。
食べ物も積んで
男の首も、見える所に
食べ物と、舟の先の
首は、1698年の
記録にあります
窓は噂だけ。造れた
かは、まだ言えません
首には、大釘。
流した側が通した
原文は、『大釘に貫
て有』だけです
日本にも、首に釘の
例はあります
大釘が何なのかは、
まだ決まっていません
女は、言葉が通じ
ないから、長崎へ
男の首は、こっちに
残って、埋められて、
祀られた
長崎へ送る扱いは、
本当にありました
ただ、長崎の日誌に、
その女はい
ませんでした
首のその後は、記録
に書いていません
それが、車神社に
伝わった
車の由来は分から
ないけど、埋める
ときの話かもしれない
貴人は男、と読めます
ただ、車神社の話は、
1698年より前
からあります
1698年の話が、
あとから混ざったの
かもしれません
……できた
ちゃんと、話になってる
はい。材料は、どれ
も本物です
でも、つなげた所は?
同じ舟だった。
貴人だった。祀られた。
シャムから来た。
見て書いた
全部、
『もしそうなら』だ
材料が本物だから、
本当っぽく見えた
だけなんだ
はい。材料が本物でも、
同じ出来事だったとは、
まだ言えません
300年、みんな、
そう思ってきたんだ
本当だった、とは
言えません。
ありえなくはない。
そこまでです
……『共に虚説也』
はい。1699年の
日記の人は、そう
書きました
皆がまるで
見てきたように
話す、とも
でも、わたしたちは、
『見てない』って
分かってて、つないだ
本当っぽく見せてた
物、三つあったよね
見た目と、やってる
ことと、役所の
手続きです
その三つ、もう
調べたよね
調べて、はずれた、
と思ってたけど
……負けおしみ
っぽいけど
『ここじゃない』
って、分かったんだ
はい。そのぶん、
探す所がしぼれました
見た目でも、
やってることでも、
手続きでも決まらない
じゃあ、何なら
決まるの?
本当にあったなら、
どこかに残ってる
はずの物です
探す所は、四つです
ひとつ。地面の下の物
車神社の古墳の、
1968年の調査報告書は、
まだ開いていません
前に言ってた、
頭だけの骨だ
金属が刺さった跡が
あれば、首の話
に近づく
古墳の時代の骨なら、
1698年の男の人
じゃない
ふたつ。別の帳面
舟が着いた町の側と、
奉行所の側
残っているかも、
まだ分かりません
みっつ。シャムの側
の記録
1698年ごろ、女
と男の首の事件
があったか
まだ見つかって
いません
よっつ。この記事を
書いた人
1698年の舟を
書いた本、『改正
甘露草』です
だれが、いつ、何を
見て書いたかは、
分かっていません
長崎の日誌は、もう
開いた。無かった
それも、ひとつ
分かったこと
はい
ネットで読めるのは、
ここまでです
残りは、現実の本や、
地面の下にあります
クロコと探せるのは、
ここまでだね
クロコが探してきて
くれた物は
わたし一人じゃ、
とても無理だった
のり子さんの
『おかしい』は
私には、できない
ことでした
……満足した
あとは、現実に
足を運ぶ話
それはまたいつかに
しよう
はい。いつか
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